子どもと家族と私とわたし
~ アサーティブ・トレーニングで21世紀スキルを高める ~
「発表してもいいですか?」
朝の教室に子どもの元気な声が響きます。
登校途中に見つけた松ぼっくり、昨日の夜おうちであった出来事。子どもたちは次々に前に出ては、自分の発表を行ないます。
これは、長男が通っていた小学校の朝の風景。長男も、歯が抜けたこと、サッカーの試合で勝ったこと、いろんな発表をしていたようです。
子どもたちは「明日は何を話そうかな」って楽しみにしながら学校に行く。発表する子もいれば、聞くだけの子もいて、どちらでもいいし、内容も制約がない。そんな中で、子どもたちは受容感と安心感の両方を育みながら、他者への関心を広げていくんですね。
当時は、おもしろいことしているなーくらいに思っていたのだけど、その後「アサーティブトレーニング」という考え方に出会って、この発表が土台になっているなって感じたんですね。「アサーション」とは、自分の思っていることを言葉で表現するコミュニケーションの方法のこと。そのトレーニングのことを「アサーティブトレーニング」と言います。
アメリカやカナダ、オーストラリアなどの幼稚園や小学校では「Show & Tell」という活動を通して、この「アサーティブトレーニング」を行なっています。
今日は、アサーティブトレーニングとそれを通して培われる力について考えていきましょう。
1)アサーティブトレーニングで育つ3つの力
2)発表する、発表を聞く
3)よりよい人間関係を作るために
大人だって人前で発言する時って、ちゅうちょします。私がお話するセミナーでも最後の質疑応答でサッと手があがることはほとんどありません(笑)。それなのに、子どもには積極的に発言するように求めちゃいませんか?
せっかくだから、ご家族みんなで練習してみてはいかがでしょうか?
「どうやってつなげたの?」
「汽車はいくつある?」
そんな素朴な質問から、対話を広げたら楽しいですね。
アサーティブトレーニングを通して育つ3つの力は、子どもでも大人でも必要なものです。
どんな力が育つのでしょう。
自分の伝えたいことがある時に話せるので、安心して話せます。そして、繰り返すことによって、少しずつ人前で発言する事に慣れていきます。
例えば、夕食の時に家族で代わりばんこに「発表」してみてもいいですよね。
発表の後には、他の人からの質問を受け付けます。それによって、質問に適切に答える力が育ちます。思いがけない質問や感想に、自分の発表の新たな魅力に気づいたり、回答を考える過程で多角的な視点で考え、それを言語化する対応力が育っていくのです。
発表するだけでなく、質問の内容を考えるために深く話を聞き、考えるようになります。それが傾聴力です。
アサーティブトレーニングの良いところは、話す側だけでなく聞く側にとっても成長のきっかけがあること。相互に作用しながら、場を共にするメンバー全員が成長していきます。これは家族内で行なっても、もちろん同じような効果があるのです。
これら3つの力を通して培われるコミュニケーション能力は、今後、学校や社会では欠かせない能力や知識です。
日本以外の多くの国の子どもたちと話していて驚くのが、自己主張の強さです。身振りを交えて、相手をしっかり見ながら意見や考えを主張する子どもの姿に圧倒されることもあるくらい。これからの時代は、そうした人たちと一緒に働いていくことになるわけです。今からアサーティブトレーニングを通してコミュニケーション能力を高めていきたいですね。
では、具体的にご家庭でトライするなら、どのような方法があるのでしょう。
身近な題材を元にして、気軽に話せるのがアサーションのいいところ。お子さんが大好きなものや日々の出来事、お友だちと遊んだことなど、小さなトピックを用意して、話しやすい環境づくりをまず始めましょう。
3歳くらいなら、「何したのかな?」「どんなことがたのしかった?」などと聞いてあげると、スタートしやすいですね。繰り返すことで、自分でどんどんお話を進めていけるようになります。
中にはママと二人ならお話できるけど、パパだったりお友だちだったりすると話せないことがあるかもしれません。まずは、話せる人と話せればOK!
話すことが楽しい!と感じることを最優先にして、練習してみましょう。
話が進みにくい時には、どんどん質問して助け舟を出していきましょう。
「どうして、それが大好きなの?」
「その時、やったー!っていう気持ちだった?」
「いつから大事にしていたの?」
「誰が教えてくれたのかな?」
素朴な疑問や感想を伝えると、話を聞いてもらえたっていう安心感も育ちます。
アサーション(assertion)によって、お互いを尊重しながら率直に自己表現ができるようになっていきます。それができるようになると、円滑なコミュニケーションを取れるようになっていきます。
どんな感じか、ちょっと見てみましょうか。
・アクティブ(攻撃的):「なんで食べちゃったのよ! あり得ない、サイテー! ムカつくわー!」
・ノンアサーティブ(非主張的):「しょうがないよね、もう食べちゃったんだもん(相手に言わずに自分の中にしまいこむ)」
・アサーティブ:「私、プリン食べるのをとっても楽しみにしてたから悲しいよ。ひと言、聞いてほしかったな」
このように、アサーティブなコミュニケーションを取ることで、落ち着いて自分の気持ちを相手に伝え、改善ポイントを共有することができるのです。
親しき中にも礼儀あり。子どもやパートナーとの関係ではついつい遠慮ない言い方をしてしまうことがありますよね。感情をそのまま相手にぶつけてしまいそうな時にもアサーティブな関わり方によっていい方向に向けることができます。逆に子どものカチンとする言動にもアサーティブなかかわりによって、子どもも適切な対応の仕方を学んでいくことができます。
幼児期からアサーティブな対話が家庭にあると、自然と発信力が育っていくし、相手に共感しながら自分の意見を伝えられるようになっていきます。
まもなく冬休み。すこしゆっくりできるお休み、そしてお正月という節目をうまく活用して、対話のある家庭づくりを始めてみませんか?
生田あゆみ
元私立高校教員
教育コーディネ-ター
21世紀型子育てプロポーザー
ちゃんとしなきゃで子育てをしていたら酸欠になりました。
そういえばこの感覚、教員時代にも感じていたぞ?
おかしいな、なんでうまくいかないのかな?
そんな思いから学びを深めていくと、教育も子育ても古い価値観にとらわれて自分の感覚を置き去りにしていることが分かりました。そして、私と同じように自分を失くして子育てしている人たちがたくさんいることも知りました。
現在は、「わたし」を軸にした21世紀型子育てマインドの育み方をお伝えするふぁみりあすと、「教育を選ぶ」をサポートし、学校選びの選択肢を増やすポータルサイト「教育移住.com」を主宰しています。
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