九十九屋さんたの妖怪古今録
雷鳴の日に、突然現れた見慣れない獣。そうしたものが雷獣と呼ばれる話を前回しました。そんな雷獣の候補の一つにハクビシンというものがいます。
大きさは60センチあまりで、長い尻尾を持っており、額から鼻にかけて、まっすぐな白い線がはいっています。我が家に時折出るのですが、初めて見たときは驚いたものです。雷の日に不意に飛び出してきたのならば、まさに妖怪だと思えるのに十分な大きさでした。
では、ハクビシンが雷獣一般の正体かといえばそうでもないようで、まして江戸時代にいたかどうかは分かっておりません。
さて、妖怪は零落した神であるというのは、柳田國男説であり、聞かれたことはあると思います。しかし、雷獣というのは、実在の獣として多く記録されています。それは当時の価値観も反映されていると思うのです。
江戸時代というのは、本草学という学問がありました。本草学というのは当時植物から多くの薬が作られていた事から、草(植物)を本にしたものという意味で、薬学ともいえます。そのため、植物だけでなく、動物や鉱物など、薬になる、役に立ちそうなものを調べる学問となりました。雷獣の記録は、そうした視点から残されているように思えます。もっとも当時の事典である和漢三才図会を見ると、今では妖怪に含まれるものの姿を多く見ることができますが。
さて、雷獣に関して興味をもたれた方は、熊倉隆敏さんのマンガ『もっけ(勿怪)』4巻に収録された話を見ていただくとよいと思います。
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